■RENAULT 5 ALPINE (1981model)               ■

 
 

 

     
 
 
ルノーの大ヒット車『サンク』に手をいれ
ホットハッチの元祖として生まれかわった
サンク・アルピーヌ
 
その性能とは裏腹にシックでやる気を感じ
させない外観も美点のひとつ
 

 
■すべての始まり
 
1972年春にデビューしたルノーサンク(以下R5)は、登場するとまたたくまにフランスのベスト
セラー・カーとなった。
それまで、フランスのベーシックカーには4枚のドアが必須であった。しかしR5は2枚のドアで登場
ベースとなったR4(キャトル)のスキンチェンジ版とは思えないほどの、その革新的なコンセプトは
メーカーの予想をはるかに超えて受け入れられ大ヒット作となり、ルノーを欧州No.1メーカーの座に
つかせることになる。
そのベストセラーR5に、1950年代中頃からルノーのコンポーネンツを使ったスポーツカーを製作し
ていた『アルピーヌ』がチューニングを担当し生まれたのが、初の量産スティールボディアルピーヌ
こと『ルノー5アルピーヌ』である。
 
フランス版ミニ・クーパーことR5アルピーヌは、その後のゴルフGTI等に続くホットハッチブームの
火付け役となった。
そう、これがすべての始まりだったのである、自分にとって。

アルピーヌといえば、戦後のフランスを代表するスポーツカーメーカーでしょう。
特に名機・A110のその美しいスタイリングを始め、輝かしいラリー界でのヒストリーは私のココロを
虜にしていました。
思えばセルボもA110と同じ、リアエンジン・リアドライブのクーペだったのも一因かもしれません。
 
そんなアルピーヌがR5をチューニングした量産車があるのを知ったのは、そのころ創刊まもなかった
『Tipo』誌の記事上のことでした。
憧れであったアルピーヌA110は当時就職したばかりの身には高値の花でしたが、初代サンクのその
愛らしい下膨れの姿を残したままアルピーヌによって手がかけられたクルマは、その佇まいも含めて
充分に魅力的でした。値段もA110よりはかなりこなれてきてましたし。

それでも、購入した個体は9年落ちで135万円のプライス・タグがつけられてました。

新車では389万円もしたらしいですからねぇ。新車販売時期は1976年のことですから、かなり高価
な車であったことは間違いないハズです。
そんなクルマ、そう数多くは無いと思ってたんですが、意外にもたまたま通りかかった中古車屋の軒
に展示されてるのを見つけてしまいました。
 
とりあえず見せてもらうと、屋根がマルエヌ製のオープントップに改造されてることや、車検対応の
為に国内で穴開けして取り付けられた助手席側ミラーの付近の塗装にクラックがあったりしたものの
全体的には年式相応のヤレってな感じで程度的にはまあまあといった感じでした。
前のオーナーが元シルバーのボディを、品の良いブルーがかったシルバーに黒のストライプテープ
(この組み合わせは純正では存在しない)という仕様に全塗装したらしいんですが、これまた良い感じ
だったんです。
当然、あのフカフカシートも素晴らしく魅力的でした。あんなの他に見たことない。
 
で、一晩考えました。

この先、一生のうちで乗れるクルマなんてタカがしれてる。乗れるときに乗っとくべきだ、と。

それと以前の自動車文化誌『NAVI』に、あれは松本葉さんかスズキ編集長の言葉だったでしょうか、

「初代サンクは一度持ってみるといい。それも長く所有してみると、その良さが・・・」
この言葉に後押しされるようにして、私は契約書にハンコ押すことになります。
 
しかし、これがすべての始まりとなるとは思いもよらなかった。
 
私がこの5アルピーヌを所有してた時期っていうのが、もうずいぶんと前のことになります。
購入が91年8月。走行約78.000kmからスタートして、98年の6月までで120.000kmちょっと。

最初は休みの日しか乗ってなかったのが、最後のほうでは普通 に足として通勤に使ってました。

それなりに距離も走ってる個体ですから、トラブルやら改修も幾度と・・・・
実は詳しいデータを次のオーナーにあげちゃったんで、覚えてるトコだけお話しましょう。
 
その走りっぷりの良さとは裏腹に、こいつには熱くなりすぎるオーバーヒートの傾向がありました。
クーラントを吹き返すほどのものでは無かったんですが、メーター読みで110度ほどが普通という、
ホントにこまったヤツでした。
冷却経路のクリーニングやら増設タンクとかいろいろ試してみたんですが、特に大きく改善は出来な
かったような気がします。
これが足をひっぱるカタチで後付けしてあった吊り下げ型クーラーもとっぱらいましたし(^^)。
夏はだまってヒーター付けて屋根開けて乗ってました。いやもう熱いのなんのって。かわりに冬は
ヒーターの効きが良くて快適でした。 
ヒーター付けたら水温もイイ感じだったんで、ラジエターのキャパが比較的小さすぎたんでしょう。
後のオーナーさんからの情報だとラジエターを新品にしたらおさまったよということでした。
 
手を加えたとこをざっと挙げてみますと

 

エンジン:91.000km時にオーバーホール。オイル下がりが出て、ついでにとあちこち直したら
     ほとんどオーバーホールと同じだったという・・クラッチやウォーターポンプ、メタルも
     交換。
機関系他:キャブはダイアフラム等のトラブルで結構トラブッた。最終的に新品と交換。
     フィルターキング製フュエルフィルター取付。
     K&N製エアクリーナー取付。フッティングパーツ他はFRPで自作。吸気音が良くなった。
     燃費はあんまし変化なし。   
     エキマニにクールイット・サーモテープを巻き付けた。熱害は飛躍的に向上。
     ステアリングシャフトを伝ってくる熱が遮断された。
     ラジエターファンを任意にオン/オフ出来るよう改善。
     国産バッテリーが使えるよう、ステイその他の改修。
     部品取りに持ってたR5A-Turboからビルシュタインショックを移植。エナペタルに依頼し

     オーバーホールも済ませる。その後、リアショックはハネすぎた為に純正に戻す。

     オルタネーターも2回ほど交換。ブレーキマスターシリンダーも交換。
 
内外装等:インテリアのシート、ドアパネル等は部品取り車から総移植。アンコも詰め直した。
     ポジション改善の為、MOMO製ステアリングに交換。
     サイドブレーキのグリップにクラックが入り、その保護の為に上から革を巻いた。
     疲労粉砕したシフトノブはA110用?を流用。
     その他、プラスチック部品はかなり痛んでた為、FRPで補修or交換。
     すぐに白くなるウインカーレンズは、裏側からバルブ用のビニール系塗料で着色。

 
とにかくよ〜サビるクルマでしたから、サビ取りは良くやった記憶がありますね。
リアフェンダーのサビが一番深刻でしたが、あっこは直すのも金かかるとこですし・・・。
インパネとか日頃のアーマオール処理が効いてたのか、ヒビ割れひとつ起こさなかったんですけど。
 
今思えばカネも手間もかかったクルマでしたが、いろいろといい思い出が残ったクルマです。
笑えるネタもそれなりに提供してくれましたし、その走りの良さや乗り心地の良さは
私のカラダをおもいっきし菱型菌(ルノーのエンブレム参照)に侵蝕させてくれました。
シートの作りに関する考え方や視界の与え方、足まわりのセッティングの妙は一度馴染むとなかなか
カラダからはなれてくれません。それとあの動物系のエクステリアも。
この辺が文化の違いなんでしょうね。絶対に日本車では真似出来ないところでしょう。真似しろとは
いいませんけどね。
 
善し悪しは別として、私はルノーのソコにはまってしまうことになりました。で、次もルノーです。
もはや泥沼への一歩(^^)
 
ちなみにこのサンク、情報では現オーナーの手でレストアされて北海道で余生を送ってるようです。